2022年11月25日金曜日

令和四年 夏興帖 第六(鷲津誠次・木村オサム・青木百舌鳥・望月士郎・浜脇不如帰)



鷲津誠次
頬骨の尖る老母よ夏の蝶
しかと見つめられおののく油虫
かなぶんぶん転校生にやたら寄る
先頭はくじ引きで決め蟻の列
咄家の善き友ならん雨蛙


木村オサム
万緑を見上ぐ胃腸の弱い人
不眠症水母の中は遊園地
手術室に無かったですよ風鈴は
朝曇顔の歯車噛み合わぬ
夕顔に合はせて土下座しに来たる


青木百舌鳥
りんりんと麦茶鳴らして配りけり
胡麻油香り鱧天穴子天
植樹して梅雨の濁りを汲み来たる
雌雄無きかたつむりとて紅濃きは


望月士郎
疑問符のかたちにみみず干乾びて
白玉のあたりを女医に診られてる
熱帯夜たらりたらりと砂時計
空蝉が背中に爪を立てている
どの窓も殺意やさしく大西日


浜脇不如帰
二千年オーバーエージ枠の神
百世紀かけて櫃まぶしをペロリ
成金を中トロで別件逮捕
すみません時間がなくて揚花火
らいてうのココロ毎秒半年後
箱眼鏡生温かりし壱気圧
十字架の鮎そのままのたなごころ