仙田洋子雨の日のまだいとけなき蕎麦の花
はたはたを追ひてはたはた飛びにけり
稲塚に当てし背中のあたたかく
ふるさとの上がり框の冷やかに
新豆腐ゆふべの空を雲流れ
十三夜遊郭跡の細き路
秋の川水泡の上へ水泡浮き
大井恒行生き残る罪のようなる暮の秋
死に憑ける秋意とならん桂の樹
泉番水澄み空澄み山河澄み
秋天のそと胸に吸う青き風
辻村麻乃鷹渡る古き商家の福瓦
翳りては紅葉且つ散る書院窓
一心に句帳を覗く秋日傘
多羅葉に刻まれてゐる秋日差
ボーイスカウトに囲まるる駅冬隣
沼底に銅眠るらし龍の玉
椋鳥のげえるげえると鳴き交はす