2024年8月23日金曜日

令和六年 春興帖 第六/歳旦帖 補遺(青木百舌鳥・小沢麻結・渡邉美保・前北かおる・高橋比呂子・なつはづき)

【歳旦帖】

青木百舌鳥
大年の昼の湯舟をあふれしむ
をぢさんの俳句会なり賀詞交はす
初句会とて担ぎ来し古酒のあり


小沢麻結
お飾の藁の香れる初湯かな
弾み落つる黄身追ひ白身寒卵
ポインセチア一番幸せさうは誰


渡邉美保
爪立てて賀状の龍のやさしき眼
お降りや窓越しに見る三輪車
瓦礫から瓦礫へ人日の虹あえか


前北かおる
年をとこやうやく起こし福沸
負けん気のなくて長兄かるた取る
幕開きて磯の松原初芝居


【春興帖】

高橋比呂子
記憶みな生者なりしか雪の原
きさらぎの行李きえて山毛欅林
水文學なふたりんの玉座かな
風葬の子守歌かな忘れ水
虎屋から夜の梅とて明けにけり


なつはづき
西遊記みたいな雲とゆく日永
かざぐるま風のことばの真似をして
マニキュアが空っぽになる花疲れ
躑躅燃ゆブエノスアイレスは正午
腕と腕絡めてさびし春の蜘蛛
荷を解いて四月の日差しから慣れる
酔っ払い風船買って帰るかな