真矢ひろみ意味に飽く少年少女夏の果
白シャツの深く息する美白かな
成長す入道雲のあやふやに
神谷波天網の弛みに弛む暑さかな
積み込むは離婚の荷らし百日紅
夜な夜なの守宮に声を掛けてやる
渡邉美保船涼し鯨の形の島を過ぎ
八本の足のもつるる夏の蛸
海難の無縁墓古る百日紅
海光に浮かぶ獅子島夏の果
西村麒麟阿の口が息を吸ひたる昼寝かな
玫瑰やまづ輪になつてストレッチ
夏野行くオープンカーの調子良し
行く夏を惜しみつつ食ふ光りもの
寝るまでを楽しんでゐる夏布団
飯田冬眞(「豈」「未来図」)パセリ食む酔ひ覚めの顔突き合はせ
ついばみし命の数を羽抜鳥
夏座敷枝毛気にする姪の指
あめんぼう転々と居を移し行く
泡吐かぬ方の金魚に名をつけて
近江文代海水着秘所はしづかに濡れ残り
炎昼の女は影を鋭くす
噴水のはたと止みをる世の終り
生産をしない体に夏の月
肉声の限りを尽くし夏終る