秦夕美絵はがきの文字思ひをり梅雨の星
佐藤りえ鶏頭の裳裾ひるがへして遊行
筑紫磐井穏やかな晩年はなし叩けば蚊
花鳥篇 第九(五島高資)
五島高資蛇口から水のふくらむ二月かな
雛の間を川は夕べへ流れけり
日の本の日やみちのくの春の海
朝へ出る道のうねりや竹の秋
水を送るのみの橋あり春の雨
爪先を回してゐたり春の闇
田水張る高天原のけむりかな
秦夕美絵はがきの文字思ひをり梅雨の星
佐藤りえ鶏頭の裳裾ひるがへして遊行
筑紫磐井穏やかな晩年はなし叩けば蚊
五島高資蛇口から水のふくらむ二月かな
網野月を忍冬今宵の予定メールせり
佐藤りえくづほれてさなぎのやうな稲荷寿司
望月士郎人形の目は貝ボタン海市立つ
筑紫磐井北川に会う約束が大夕立
近江文代向日葵に夫の知らない声を出す
中村猛虎アリバイは春の朧に濡れている
真矢ひろみ県道にミミズのたうつ電波の日
水岩 瞳散る桜ほんね言はぬも愛のうち
青木百舌鳥(夏潮)斑雪嶺を打つ日も消えて本降りに
下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)目の横に耳の穴あり羽抜鳥
岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)石楠花のあはひを登りゆきにけり
依光正樹(「クンツァイト」主宰)町鳥は町に遊んで梅雨曇
依光陽子(「クンツァイト」)青柿や浅草に来て空を見て