豊里友行恐竜が吼え出す酷暑の地下鉄
旅人とおもう魚群の青葉闇
砂浴び雀の東京群像よ
ガーベラの一輪挿しの日本晴れ
とてもちいさな祭囃子の蕾
とりあえず浜松町の鰻重よ
雲海は神の食卓そらの旅
下坂速穂人去りて葉音ばかりの夏館
紫陽花や手紙のやうに本を開き
変はらぬ町のどこかが変はり冷し汁
下駄でも買うて帰りたき西日かな
岬光世夏野への手動扉を開け広ぐ
見上ぐれば知りたるかほの夏の草
青き嶺雲に遅れて吾も行く
依光正樹声がはりしたる不思議に夏の海
花鉢にいくつも出会ふ日傘かな
子の通ふ公園を見に夜の秋
ゆふがたの匂ひのしたる潮干狩
依光陽子蜥蜴ゐる石のしづかを思ひけり
いつぽんの線で鳴きけり牛蛙
るりしじみ秋へ秋へと誘ふは
夏の水町のいろいろ映しつつ