2024年1月12日金曜日

令和五年 夏興帖 第十(水岩 瞳・佐藤りえ・筑紫磐井)



水岩 瞳
この更地何がありしや街薄暑
じいばあの涙忘れそ沖縄忌
語り部の語らざること原爆忌
兵ひとり死んでも異常なしの朱夏
この新刊いつか古典に麦の秋


佐藤りえ
弾込めの指細からむ単帯
歩くより浮くのが早い水遊び
鳥立つて群れてゐるのも端居哉


筑紫磐井
お揃ひの夏帽子なりあかの他人
小諸にて虚子をたたへる夏講座
硝子戸の向こうに夏の海がある