2025年3月21日金曜日

令和六年 秋興帖 第十一(浅沼 璞・佐藤りえ・筑紫磐井)



浅沼 璞
片脚を伸ばしてかなかなを聞けり
かなかなと外湯に瘦身をまげる
朝霧や数多の樹頭あらはにし
柄と柄重ねてひとり秋高し
針金の人形の腰秋めきぬ
唇のかたちの刺繍秋立ちて
軽やかに鬼の子としておりてくる


佐藤りえ
わたしたちたちまち居待月のもと
火を捨ててきた掌も霧の中
 コペンハーゲン、ストランゲーゼ30番地
秋深みピアノの蓋に置いたパン


筑紫磐井
精霊会コロナの死者はいつかゼロ
化け物になつて西瓜の帰り来よ
檻の中で人が飼はれる月夜かな