曾根毅鹿威しより氷柱とも狂気とも
コーヒーを待つ長葱と暖炉かな
冬夕焼近づいてくる杖の音
浅沼 璞照らされてゴジラの背鰭めく聖樹
ボトルネックギター聖夜も乾びたる
マネキンの褞袍はためく夢の島
冬うらゝ埴輪の口は目と同じ
小春日の巨大風車の曲がる見ゆ
湯けむりの消えて冬至の柱かな
全身で寒の尻ふる赤ん坊
なつはづき小六月るるると回る綿埃
竜の玉他人行儀のままの靴
さざんかや明るく人に欺かれ
着信は母さんばかり夕焚火
クリスマス射的の銃のずっしりと
笹鳴や日陰の道の遠く見え
顔上げて静かに生きて今日も雪
下坂速穂かくれんぼしてゐる背中日短か
襟巻やお菓子のやうな犬連れて
なだめすかされしブーツの女かな
冬林檎写真の君の横に置く
【夏興帖】
中村猛虎人間になりきれなくて散る蛍
逃げ水を追い迷い込む恐山
父の日の父図書館の椅子にいて
鰻屋の女将の指の白さかな
金魚掬いタトゥーの白き手が伸びる
週刊誌の袋綴じに棲む青葉木菟