冨岡和秀風前のともし火となるディストピア
傲慢と空虚のはてに消滅都市
日没に絡めとられて獄中記
堀本吟水田風頭上の尾灯はB29
整然と骨の連なり轢かれ蛇
女たち右と左に整列す
まつりごとですそもそもはもぞもぞと
木村オサム赤丸が描かれただけの暑中見舞
廃線の二駅結ぶ暑さかな
館長が噴火の話盛る小暑
トンネルと対峙するエペ夏の暮
ハチガツノヒフガカラダニシガミツク
【秋興帖】
ふけとしこ新涼や栗鼠の尾が幹打つてゆく
百年が過ぐかなかなを聞きゐしに
夜も晴れてきれいに外す桃の種
岸本尚毅鳥と人秋のみなとの片陰に
乱心の大きな目鼻秋の風
赤蜻蛉飛びをり赤き蜂も飛ぶ
秋風や老いの昼餉の飯白く
折れて伏すカンナや濡れて土がつく
霧来るに向かひて立てる露台かな
秋風やお道化歩きの座頭虫
瀬戸優理子秋冷の擦り傷光る硝子瓶
揚げたての雁擬き盛る良夜かな
さるのこしかけ悪妻を貸出し中
ハーブティー蒸らして軟禁の小鳥