2015年6月26日金曜日

【花鳥篇特別版】澤田和弥さん追善、その3 (仲田陽子・小沢麻結・堀田季何・仲寒蟬・小林かんな・飯田冬眞・西村麒麟・依光正樹・依光陽子)



仲田陽子
清音を淫らにかさね青葉騒
木星に近づいているさくらんぼ



小沢麻結
飲み止しの泡なほ盛んソーダ水
茅花流し青ざむ愁眉開かれよ
明易や誰が詠ひ継ぎ革命歌



堀田季何
天国の水は平し君が手に
天国の水は平し君が胃に
天人の胸は平し君が眼に
天人の胸は平し君が手に



仲寒蟬
生きるのに疲れたといふ山椒魚
パレードの先頭は彼栗の花
親指のやうな字雲の峰に書けよ



小林かんな
革命のため白靴の紐結ぶ
夏帽子追いかけて海渡りけり



飯田冬眞(「豈」「未来図」)
汗だくのカレーライスの左利き
革命の前夜静かに蟹来たる
目瞑れば蟹ざわざわと浜に満つ
草笛や黒ネクタイをなびかせて
   *
澤田君との出会いは、彼が例句入力のアルバイトとして私の勤務する会社にやって来たのが最初でした。
彼を連れてきたのは、佐藤文香さんだったはず。
数年後、句会をご一緒にするようになり、辛い物が苦手な私と辛い物が平気な澤田君とで、カレーライスの早食い競争をしたり、カラオケに行ってふざけたり、気の合う弟みたいな存在でした。
最後に会ったのは、昨年の芝不器男俳句新人賞の会場でした。
FBで訃報を知って、虚脱感に襲われました。
心よりご冥福をお祈り致します。



西村麒麟
君のことまた思ひ出す新茶かな
新樹光握手してから手を振つて
すぐ照れて戯ける人よ夏休み
真面目な手紙真面目な新茶の贈り物
君の訃が嫌で夏食ふおでんかな
しょうもない話がしたし生ビール
ぽつかりとした六月を過ごすなり



依光正樹
水遊び了へたるあとに舟ひとつ



依光陽子
泣いてゐるときもありしか昼顔に



2015年6月19日金曜日

【花鳥篇特別版】澤田和弥さん追善、その2 (筑紫磐井・岡田由季・関悦史・北川美美・中山奈々・大井恒行)



筑紫磐井
青春ともよ革命は近いのに



岡田由季(炎環・豆の木)
永遠の前夜行き交ふ金魚たち
為す術もなく気の抜けるソーダ水
二階から人類を見る青嵐



関悦史
五月その毛深さを知る機会なく



北川美美
影のみの五月の鷹を思うかな



 中山奈々
金魚玉抱へて逝つてしまふなよ



大井恒行
前夜なりけり寺山・澤田早逝す







2015年6月12日金曜日

【花鳥篇特別版】澤田和弥さん追善、その1 (神谷波・曽根毅・真矢ひろみ・福永法弘・杉山久子)




神谷波
どうしたのなにがあったのほととぎす  



曽根毅
鯉幟夜明けの風を待ちにけり



真矢ひろみ
もうすでに花に生まれてゐる頃か 澤田和弥(「ふれんど」落選展2014・週刊俳句より)
かげろふの無方無縁の海に翔ぶ    
煉獄を君ならばもう過ぎる頃
連絡乞う無限を詞にできますか




福永法弘(石童庵) 
わくらばに前夜の震へありにけり   
慈悲心鳥夭折伝に列すべし



杉山久子
五月果つ海色インクこぼしつつ


2015年6月5日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第六 (下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・五島高資・真矢ひろみ)




下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
囀やよく会ふ人の名を知らず
いつからか巣に燕ゐる雨の音
花も葉も手よりつめたき牡丹かな



岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
一片の離れて逝きし八重桜
夏鶯のこゑより高く登りけり
白菖蒲きのふの白に逢へずとも



依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
近づいて木立に鳥や水遊び
姫著莪にきらきら飛んでゆく鳥よ
春禽のとほり抜けたる人の中



依光陽子 (「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
牡丹の中や真昼を睡る虫
ひなげしに破りとられし頁かな
浮き咲いて仏の如し金蓮花




五島高資
零れつつ昼を香らす花馬酔木
野を越えて聞くせせらぎやすみれ草
触れ合って水の廻れる桜かな
日の神や田の神を待つ燕子花
ムスカリや旅にしあれば畝に咲く



真矢ひろみ
白鷺の一二一と大見得を
己が影を求めぬものに青鷹
おとうとはとど松のみの十姉妹
片蔭に待ち人を待つ姑獲鳥かな
頻迦聞く土星を過ぎしあたりより