2015年6月5日金曜日

平成二十七年花鳥篇、第六 (下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・五島高資・真矢ひろみ)




下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
囀やよく会ふ人の名を知らず
いつからか巣に燕ゐる雨の音
花も葉も手よりつめたき牡丹かな



岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
一片の離れて逝きし八重桜
夏鶯のこゑより高く登りけり
白菖蒲きのふの白に逢へずとも



依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
近づいて木立に鳥や水遊び
姫著莪にきらきら飛んでゆく鳥よ
春禽のとほり抜けたる人の中



依光陽子 (「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
牡丹の中や真昼を睡る虫
ひなげしに破りとられし頁かな
浮き咲いて仏の如し金蓮花




五島高資
零れつつ昼を香らす花馬酔木
野を越えて聞くせせらぎやすみれ草
触れ合って水の廻れる桜かな
日の神や田の神を待つ燕子花
ムスカリや旅にしあれば畝に咲く



真矢ひろみ
白鷺の一二一と大見得を
己が影を求めぬものに青鷹
おとうとはとど松のみの十姉妹
片蔭に待ち人を待つ姑獲鳥かな
頻迦聞く土星を過ぎしあたりより