2016年6月10日金曜日

平成二十八年花鳥篇 第一  (石童庵・夏木久・中村猛虎)



石童庵
梅寒し文革以後は違ふ国
軒端の梅内へ内へと薫りけり
たかんなや京帥に近き杣暮らし
たかんなや同窓会へいそいそと
わくらばの一葉を載せ臥牛石




夏木久
乳液を出し過ぎてをり花ふぶき
春夕もワインも君も傾けり
画面右へ逆説的な菜種梅雨
順調でますます歪暮の春
梔子の錆を落せり比喩として
モナリザの背景辿り何時か初夏
邂逅や若夏へストロー差すやうに




中村猛虎(なかむらたけとら)1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。
向日葵に見つめられていて童貞
花の下きっと私が埋まってる
昼顔や靴紐解けて死ぬしかないか
十五歳無防備すぎるラベンダー
菜の花の塊てんてんてんと海へ
メビウスの帯の如くに夏燕
木苺の粒で閉じたる生態系