網野月を口口口しか見えないツバメの子
口よりも声の大きな燕の子
時鳥アルゴリズムの老いを啼く
老鶯やハスキーヴォイスの谷渡り
羽抜鳥見て見ぬ振りの与ひょうかな
電球の中の渦巻き夏祓
右回り左回りの茅の輪かな
しゃも鍋でもビールがうがい薬なら
小林苑を幽霊が映画館から出て行かぬ
夏休み投げては戻るブーメラン
交通量調査の人の麦わら帽
よく曲がる胡瓜だ友達にならう
夜の蝉ぷつと強制終了す
池田 澄子遠方へ行きたしと居る籐寝椅子
万緑や子等の声ご飯粒みたい
空々しく空あり夏の満月あり
そしてこうして忘れ忘られ涼しさよ
夕顔や気持ち隠しておく努力
夏木久漏電や昼寝の梯子より落下
この星の水のオペラを蓮の花
皆がみな孤独であればこそ蛍
炎昼や牛タン塩焼き五百円
蔓引けば砂に晩夏の摩れし音
きりかぶへきつつききつつきりかへす
気に入らず月と海月を並べ換ふ
舟を抱き月を舫ひて懐妊す
秋蝶がピアノの渕を浮き沈む
秋風へ積極的な神社かな