2017年4月8日土曜日

平成二十九年 歳旦帖 第八 (岸本尚毅・浅沼 璞・佐藤りえ・田中葉月)


岸本尚毅
元日だうでもよくて落葉を蹴る子かな
底ひまで見えて海ある初御空
初凪やペンキと雲の白と白
出初式窓に見えをり小鳥に餌
伸子すこし古風な名前初句会
野良犬を見て初旅の続くなり
やる気なささうに馬ゐる馬場始



浅沼 璞
歳旦 三つ物 
還暦の貫禄もがな鏡餅
 ロッケンロールとぞ花の春
朧夜をとぼとぼ雪の降りかかり


佐藤りえ
歳旦 三つ物
淑気満つチーズフォンデュの面かな
 賀客はいずれ髭の四五人
春鹿も土間も日向に濡れるらむ

かまくらに時間外用小窓あり
逆剥けの新巻鮭が湯の中に
猫が跨ぐプラスチックの鏡餅
シェルターに雑煮の湯気の立つばかり