仙田洋子哭くことを許されず鳥帰りけり
てふてふのこぼす涙のごときもの
たらちねの春眠にして永眠す
春時雨母逝きし日の終りけり
死にたての母よ桜が咲きました
うららかや母の永眠はじまりて
花万朶母を焼くことおそろしく
木村オサム(「玄鳥」)囀らぬ鳥から先に巣立ちをり
チューリップ天使が酒を注ぎに来る
蝌蚪の紐散りぬ聖母の生あくび
春眠や水切り石の沈むとき
口中に夜桜見えて家出せり
小林かんな春の昼迷子のインコ名はリリイ
シラウオとシロウオは別ココロセヨ
胴体を出て脚二本清順忌
春灯君二度付けをするなかれ
記入欄よりこぼれ出す雪柳
池田澄子生まれていて未だ死ななくて迎春花
アネモネを活けて砂糖はひかえずに
空気清いか桜の花花の隙間
風ふっと途絶え柳の芽の可愛い
野よ川よ花よ人よと雨が降る
共謀罪とや散る花に嗚呼と言うな
惜春やパレットも絵具の白も汚れ