2017年10月27日金曜日

平成二十九年 秋興帖 第一(北川美美・仙田洋子・曾根毅)



北川美美
公園のベンチ置き去り秋の夕
臨終のくちびるひらくうつつかな
虫の音の黄泉平坂まで続く


仙田洋子
簡単な音が好きなり鉦叩
水の秋手を入れて水よろこばす
石ころのきれいに濡るる水の秋
曼珠沙華水ある方へ傾きぬ
曼珠沙華切りためけふの褥とす
さびしくて銀河の端に触れにゆく
海底の亀裂銀河の亀裂かな


曾根毅
隠沼や落葉まみれという愛も
衣被爪を切られているような
長き夜ピアノの蓋の化身かな