岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)照る水に青葦の脛渇きゐて
神輿過ぎ町の名のなき半被かな
舟と生き人を見送る夏の果
依光正樹(「クンツァイト」主宰)子の腕を引く手が粗き日除かな
お抹茶をいただいてゐる跣かな
凛として埃もあらず立葵
ひと夏のうまが合ふ人合はぬ人
依光陽子(「クンツァイト」)逸れてゆくその傍らに黒揚羽
打水の仕舞の水は枝に打ち
水母見しあとの両手でありにけり
大井恒行万華鏡に満ちたる晩歌あけやすし
げんしろに咲くかならずの夏の花
皇(す)べる手の憂愁の夏ケセラセラ
早瀬恵子(「豈」同人)夏少女海底を這うチューバの音
夢見るや蛇腹の四季の舞扇
祭屋台に北斎ブルーのフォルティシモ
林雅樹新緑に延びよ狂気の遊歩道
老鶯や山の麓のラブホテル
ごきぶり食ひ太るひきこもりの息子
旱天や路地を曲がるはみな娼婦
夜店怖いエグザイルみたひな人ばかりで