大井恒行半立ちでいく夢さびし秋の蚊も
秋刀魚焼く平成すでに尽きんとし
千年のひかりを先に火の祭
小林かんな詩となりぬきちきちバッタ着地して
花野めくかりそめの書肆寄せ合いて
自著を売る人人人人蟋蟀
気鬱症いいえ花野に長居した
月夜ならボタンが落ちているだろう
網野月をコピー機の前に佇む秋思かな
コスモスの素顔装いの菊花展
正装の和歌俳句とは肉体恥
秋灯その他の中に子どもの名
行く秋やゴミ袋から竹の串
六本足のタコソーセージ十三夜
遠山の紫恋えば水明り
大井恒行半立ちでいく夢さびし秋の蚊も
小林かんな詩となりぬきちきちバッタ着地して
網野月をコピー機の前に佇む秋思かな
杉山久子折鶴の千の軋みを十三夜
真矢ひろみ食べるのが遅いだなんて 獺祭忌
木村オサム(玄鳥)芒野の中心点に立たされる
松下カロアパートの外階段を鳥渡る
坂間恒子目の澄みし冬鹿指をさされいる
渡邉美保望の月白鳥橋を渡りけり
岸本尚毅秋淋し石の蛙とゴムの蛇
辻村麻乃重たげに動く秒針小鳥来る
夏木久心室を叩き秋思を誘ふ夜