2019年5月23日木曜日

令和元年 春興帖 第一(仙田洋子・松下カロ・曾根毅・夏木久)



仙田洋子
白梅のうしろ大きな山のあり
戦争のあとは紅梅ばかり咲く
祈るほかすべなき我ら鳥雲に
真つ先に帰つてゆきし新社員
猫の子ら眠りゐて三連音符
たんぽぽは小さき太陽踏までゆく
たんぽぽの絮吹きあます子供かな


松下カロ
敵なくて苺にミルクたつぷりと
地球なほ回るひばりの卵乗せ
秒針もオタマジャクシも帰らざる


曾根毅
昏昏と舟沈みゆく雪柳
つちぐもり次々に核廃棄物
情交のはじめにありし藤の房


夏木久
椿落ち白磁の皿を泳ぎをり
其処からは闇と知りつつ花筏
アルバムの文字は朧を踊りだす
トライアルに出来ぬ現世や鳥雲に
保守的な廊下の奥や凝視しやる
夏立つ他何の匂ひも立たず門
描き直す犀棲む森の風景画