望月士郎ひとり灯して白梟に囲まれる
生前の町にかざはな売り歩く
いつからか書棚の奥に黒海鼠
まどろみのまなぶたふっとめくれ 蝶
春の虹さす指のふと密告者
青木百舌鳥初国旗小さき車を撫でてをり
二日かな詣でみたれば女陰祀る
風の日となれど三日も晴れの富士
魚食ひの民と生まれて富士の春
大井恒行水ほろびゆく水の日 木に冬霧
白椿昏れつつはるか山の音
与死の椿十三平成最後の日
花尻万博夕刊と海岸に出る鼬かな
寒卵光らぬ言葉身の内に
木の国を置き去り恋の
神樹らの目覚めぬ夜を狩の宿
白足袋で行きて天草を踏みて
白鳥や湖は光になりきらず