2019年5月3日金曜日

平成三十一年 歳旦帖 第八(望月士郎・青木百舌鳥・大井恒行・花尻万博)



望月士郎
ひとり灯して白梟に囲まれる
生前の町にかざはな売り歩く
いつからか書棚の奥に黒海鼠
まどろみのまなぶたふっとめくれ 蝶
春の虹さす指のふと密告者


青木百舌鳥
初国旗小さき車を撫でてをり
二日かな詣でみたれば女陰祀る
風の日となれど三日も晴れの富士
魚食ひの民と生まれて富士の春


大井恒行
水ほろびゆく水の日 木に冬霧
白椿昏れつつはるか山の音
与死の椿十三平成最後の日


花尻万博
夕刊と海岸に出る鼬かな
寒卵光らぬ言葉身の内に
木の国を置き去り恋の むささび
神樹らの目覚めぬ夜を狩の宿
白足袋で行きて天草を踏みて
白鳥や湖は光になりきらず