田中葉月桃色のわんこのお腹春深し
春陰のまた残りたるパンの耳
てふてふや湖面をわたる風になる
春の月どんぶらこつこどんぶらこ
押印のまたも傾く葱坊主
大井恒行空・草木・海・風こだま連帯す
春北風の影となりたる鳥ばかり
山葵田の風こそ令和四月尽く
岸本尚毅海霞むはるかに靴のやうな舟
春の日や下向く犬に石が照り
供華古び樒の花の咲いてをり
メーデーが来るビルに棲む老人に
カルデラや鶯鳴いて雲湧いて
カルデラの蝶々の今はるかなり
うつくしき母にもたれて日永の子
ふけとしこ一坪で足りる商ひ遅日なる
熱々のドリアへ匙を花の雨
たんぽぽのうしろよ鬼の隠れしは