浅沼 璞一斉に目刺しなくなるカウンター
硝子戸をのぞいてぬけて春の風
このところ寝返りうてぬ涅槃かな
受付のあたりを花の散りぬるを
伊吹山横へと花のねぢれたる
布引の滝たらすなり春の宵
網野月をいまの嬰は四頭身よ岩燕
一輪挿に活ける野の草春暑し
春陰の人地下鉄の出口から
薄荷タバコ貰って吸わぬ花曇
くじらの絵探して歩く残花かな
競い合う二人の婿や潮干狩
わたしにはかえるとこある若緑
堀本 吟春風の見送りに来る令夫人
あのように拐って笑う夕桜
三月去るよくあることよくないことも
二〇一九年三月六日暁 川柳家筒井祥文氏死。一句
畏友なれば戦死と言わん春嵐
川嶋健佑(夜守派)春は名ばかりベッドの数が足りないぞ
このハサミななめに蝶を切り刻む
都市は箱おおきな桜活けておく
白魚の濁って遠い国でテロ
怒髪天突けば苺が暮れ泥む
黒揚羽ただ残像を置いてある