内村恭子踏青や道を聞かれてばかりゐる
邸宅の裏庭に入る鳥交る
春を待つ次の間飾る銀食器
生前のままの書斎や冴返る
春暖炉泰西名画一面に
早瀬恵子血圧と脈拍
コロナウイルスVS東京大空襲忌
パンデミックさくらの女神号泣す
仏壇にお迎え祈る母の春
デュオや吹かれゆく蝶々と和毛
渕上信子蛇穴を出てコロナつてなに
三月や無人の滑り台
ふらここの人たちまち寝落ち
春のマスクを洗つては干し
囀のつひにパンデミツク
真矢ひろみじゅん菜のぬめりぷちぷち甘露かな
禍々しきは菜の花の昏きより
煌めきを十把絡げぬ春の川
春一や暖色電球廻し点く
春愁ひゴルゴンゾーラを二三片
仲寒蟬キャスターのピアス揺れをり今朝の春
流氷に乗つてどこぞの神が来る
ヒヤシンス顔洗ふ手に水鏡
徐々に声高紅梅派白梅派
初蝶の飛ぶといふよりただよひ来
先生のやけに小さく卒業式
なまじ音立ててさびしき風車