ふけとしこ先勝の朝や燕の来ることも
道行や花どきの花道をいざ
三鬼の忌ピンクッションを針が落ち
渡邉美保さへづりの樹下接点のなき二人
小惑星に点灯夫ゐてあたたかし
味噌壺の味噌乾びけり春の雷
下坂速穂誕生日までの一ト月青き踏む
たんぽぽや戦の足跡の上に
春光や水を湛へて星の病む
岬光世早春の男同士の動物園
粗朶を折る音乾びたり遅き春
目の合ひし犬の吠えたる梅見かな
依光正樹一園をうち鎮めたる梅花かな
日は遠く目白は近くふんだんに
三椏の黄色い蜜に誘はれて
華やかな気持がひそむ大試験
依光陽子嫩草や秋は芒が丈隠し
みつまたの花に雨より早く着く
木が水を吸ひ上ぐる音の春を遊べ
漂鳥や振り向けば東京は花
【冬興帖】
北川美美暖房の人感スイッチにて稼働
罪思ふ百合根の鱗外すとき
ホットワイン球体となる干葡萄(巨峰)
【歳旦帖】
北川美美死ねば居ず地水火風か四方の春
嫁が君囲みて話聞きやらむ
嫁が君餅に上がりて脚白し