杉山久子飛蝗の子跳んで蔓草ゆれました
マスクの内に浅き呼吸や雁のころ
台風のうしろ姿へ献杯す
曾根 毅遊行の亀の速さも秋高し
秋の湖しずもり根の国まで近し
穂芒やここから湖の匂いして
山本敏倖牧谿の幽谷を出る秋の蝶
眠られず十三夜まで歩きます
虫の闇陸は平均寿命なり
感情の先の先まで赤のまま
鬼胡桃アンセルムスの手から落つ
渕上信子九月二八日 秋晴や赤い小さな傘干して
九月二九日 庭へ出ん秋蚊一匹ぐらゐなら
九月三十日 掃除当番秋草を少し刈り
十月 一日 今日の月マスク外して深呼吸
十月 二日 雲動き子夜の満月煌々と
十月 三日 長き夜のもういちど近現代史