2020年11月13日金曜日

令和二年 秋興帖 第二(杉山久子・曾根 毅・山本敏倖・渕上信子)



杉山久子
飛蝗の子跳んで蔓草ゆれました
マスクの内に浅き呼吸や雁のころ
台風のうしろ姿へ献杯す


曾根 毅
遊行の亀の速さも秋高し
秋の湖しずもり根の国まで近し
穂芒やここから湖の匂いして


山本敏倖
牧谿の幽谷を出る秋の蝶
眠られず十三夜まで歩きます
虫の闇陸は平均寿命なり
感情の先の先まで赤のまま
鬼胡桃アンセルムスの手から落つ


渕上信子
九月二八日   秋晴や赤い小さな傘干して
九月二九日   庭へ出ん秋蚊一匹ぐらゐなら
九月三十日   掃除当番秋草を少し刈り
十月 一日   今日の月マスク外して深呼吸
十月 二日   雲動き子夜の満月煌々と
十月 三日   長き夜のもういちど近現代史