松下カロ足元のどんぐりを見て何も言はず
哲学者のやうな山羊ゐる秋の山
傷を持つ万年筆もどんぐりも
仙田洋子盆の路吹かれて蝶のむくろかな
水たまり覗き込みゐる休暇明
両脇に標本かかへ休暇明
音もなく死にゆく星や風の盆
手鏡へ金木犀の金こぼれ
しろがねの大海原の月見舟
我が身また獣臭しや寝待月
神谷 波栗もらふこまつたこまつた多過ぎる
どこからかどすこいどすこい松手入
鯛鮃蛸うきうきと今日の月
クレーターのあばたもえくぼ今宵の月
鍔を鰐と読みちがへ釣瓶落とし
ふけとしこ棗の実かつて花街の開業医
約束のひとつを果たし柿を剥く
深秋や雨の初めを羊歯が受け