2020年11月20日金曜日

令和二年 秋興帖 第三(松下カロ・仙田洋子・神谷 波・ふけとしこ)



松下カロ
足元のどんぐりを見て何も言はず
哲学者のやうな山羊ゐる秋の山
傷を持つ万年筆もどんぐりも


仙田洋子
盆の路吹かれて蝶のむくろかな
水たまり覗き込みゐる休暇明
両脇に標本かかへ休暇明
音もなく死にゆく星や風の盆
手鏡へ金木犀の金こぼれ
しろがねの大海原の月見舟
我が身また獣臭しや寝待月


神谷 波
栗もらふこまつたこまつた多過ぎる
どこからかどすこいどすこい松手入
鯛鮃蛸うきうきと今日の月
クレーターのあばたもえくぼ今宵の月
鍔を鰐と読みちがへ釣瓶落とし


ふけとしこ
棗の実かつて花街の開業医
約束のひとつを果たし柿を剥く
深秋や雨の初めを羊歯が受け