林雅樹(澤)形式的辞職願や夕桜
チューリップ濃し退職の花束に
あたたかや傘にさえぎらるゝ視界
渡邉美保梅林を通り過ぎたる鈴の音
霾や厠に古き世界地図
街灯に造花めきたる花水木
浅沼 璞梅林の折れ線つつがなくグラフ
日を舌に感じてをりぬ石鹸玉
さきに敷く春の布団をひろびろと
みんなしてたらりとすごす花きぶし
花散るを通りがかりの空にみる
よろこびの急坂にして百千鳥
ほの暗き藤が廊下をたれてゐた
水岩 瞳いつどこで誰が何して建国日
此処までと堪へきれずに亀の鳴く
四月馬鹿続く此の国何がホント
石投げて壊す片片春の水
雑草も芥ものんで花躑躅
下坂速穂帰りたる葉ずれの中にゐし鳥も
人見知りする掌に田螺かな
空き部屋の多きアパート柳の芽
Bar閉ぢてその奥に棲む干鱈かな
岬光世野遊びやうとまれてゐて駈くる風
根菜のゑくぼを洗ふ春の水
本を読む背や春潮の太平洋