加藤知子新緑を絞めた手明日は浦安
はつ夏の天使の羽はみゅうと鳴く
江戸川水門無痛分娩痛のあり
前面に女陰あらわが五月晴
青葡萄シーラ・ナ・ギグの宿りかな
仲寒蟬空中に鳥静止させ青嵐
門柱に薔薇を這はせて魔女の家
葛切を加筆されたる壁のメニュー
裏口の水桶に酒登山小屋
中洲に鵜鳴くほどに月昇りゆく
背泳ぎの雲呼び寄せてをりにけり
両足を海へ突つ込み虹くつきり
網野月を性別は別せぬものに星祀る
天皇が頭を下げて秋めきぬ
平和とは油絵の餅か玉葱
ひしゃげた奴が元気な馬に瓜と茄子
手踊の外輪をそつと抜けにけり
寒蟬や外灯一つ幽霊に
テレビの中のつづくの文字や法師蟬
岸本尚毅紫陽花が頭の如く暗がりに
来ては去る人に雨だれ虎が雨
黒雲のしづかに蟬のなきつづけ
墓原や空蟬草に墓石に
梵妻の粉もてつくるソーダ水
明易や見えて色なき家具調度
避暑の町淋しやアーティチョーク枯れ
坂間恒子虹ふたえ額田王袖をふる
青芒風の言葉を研いでいる
夏
仙人掌を捨てし日のことはくらやみ
黒揚羽柩の蓋をあけにくる