辻村麻乃夕闇の道塞ぎたる蟾蜍
勢ひのいや増す川瀬河鹿鳴く
昼寝覚赤子の窪み残りたり
夾竹桃歯科医の指の苦みかな
歌声や実梅落ちたる隠沼に
老鶯応うる水の流れれば
蛍光灯点いては消えて梅雨の宿
曾根 毅泥酔の女を愛し山棟蛇
骨と骨ぶつかり鳴れる夏蒲団
心経や蓮のつぼみを湿らせて
小林かんな園丁に暇をやりぬ巴里祭
青ひげ公露台についている花粉
物部氏ここに敗れし未草
深く礼本殿に蚊も参る頃
緑酒の杯一斉に浮く夏座敷
望月士郎ほたるぶくろ黙読のふと独り言
白地図の上をどこまでも白靴
プールより人いっせいに消え四角
ががんぼの脚取れ夜が非対称
湖にひらく掌篇オオミズアオ
神谷 波やまももがいつぱいラジオからジャズが
曇天やかきまぜかきまぜやまもも煮る
やまもものジュースをおませな女の子と