2023年12月22日金曜日

令和五年 夏興帖 第九(眞矢ひろみ・渡邉美保・網野月を)



眞矢ひろみ
蛍の夜闇より薄く老夫婦
旱星母犬の乳垂れ揃ふ
藍浴衣十万億土の端っこに
凋落の世や夕凪を授かりぬ
一掬の金魚は旅の目を持てり


渡邉美保
青野では魚の貌めくふたりかな
風景の隅つ子にある貝風鈴
清掃課去りたる後の草いきれ


網野月を
平均率は無理な数なり今朝の夏
白牡丹中華料理は好きですが
女王とはあたしのことよおほ牡丹
二の腕の水を弾いて夏はじめ
水茄子の刺身を食らふ島暮らし
秋口や色深くなる小さき葉葉