2024年2月9日金曜日

令和五年 夏興帖 第十二(水岩 瞳・前北かおる・川崎果連・五島高資)



水岩 瞳
この更地何がありしや街薄暑
じいばあの涙忘れそ沖縄忌
語り部の語らざること原爆忌
兵ひとり死んでも異常なしの朱夏
この新刊いつか古典に麦の秋


前北かおる(夏潮)
あめんぼの影プードルに少し似て
短髪を緑に染むる真夏かな
ギャラリーのトリコローレのかき氷


川崎 果連
梅干や日の丸の種おやしらず
短夜の陰毛伸びる速さかな
網戸から救いの祈り拡散す
だまされるほうの裏庭七変化
沿道に向日葵つづく引き回し
撃った子をほめてはならぬ木下闇
弁護士ととぼとぼ帰る油照


五島高資
捨て猫のやうに玉苗余りけり
白毫に遠くて近きかたつむり
みちのくへみどりは青となりゆけり
赤富士の余波や雲の這い上る