水岩 瞳この更地何がありしや街薄暑
じいばあの涙忘れそ沖縄忌
語り部の語らざること原爆忌
兵ひとり死んでも異常なしの朱夏
この新刊いつか古典に麦の秋
前北かおる(夏潮)あめんぼの影プードルに少し似て
短髪を緑に染むる真夏かな
ギャラリーのトリコローレのかき氷
豊里友行恐竜が吼え出す酷暑の地下鉄
旅人とおもう魚群の青葉闇
砂浴び雀の東京群像よ
ガーベラの一輪挿しの日本晴れ
とてもちいさな祭囃子の蕾
とりあえず浜松町の鰻重よ
雲海は神の食卓そらの旅
川崎 果連梅干や日の丸の種おやしらず
短夜の陰毛伸びる速さかな
網戸から救いの祈り拡散す
だまされるほうの裏庭七変化
沿道に向日葵つづく引き回し
撃った子をほめてはならぬ木下闇
弁護士ととぼとぼ帰る油照
五島高資捨て猫のやうに玉苗余りけり
白毫に遠くて近きかたつむり
みちのくへみどりは青となりゆけり
赤富士の余波や雲の這い上る