2024年3月16日土曜日

令和五年 秋興帖 第四/冬興帖 第三(曾根毅・小沢麻結・木村オサム・大井恒行・神谷 波・ふけとしこ・冨岡和秀・鷲津誠次)

【秋興帖】

曾根毅
雨上がりの電気を愛す茸かな
青く固し蜜柑の尻に指を入れ
古着屋の四隅は唇の冷たさ


小沢麻結
水底の倒木古りぬ初紅葉
秋明菊真白神懸りたるかに
実玫瑰海遠くして湖の風


木村オサム
ペイペイでさっと支払っても残暑
王将の裏側は無地終戦日
秋の蚊と團十郎のやぶにらみ
浮世絵の顏にすげ替え月の宴
丸善に檸檬を置きし指香る


【冬興帖】

大井恒行
クリスマスマスクの中の実母散
愛別離苦 賽の目の一が時雨れる
ふくいくと暮れ火事跡の牡丹かな


神谷 波
水あやしあやし紙漉く手首かな
目覚めればしるしばかりの初雪が
 待ったなしの地球
善哉を食べてワタシハチキウジン
快晴の冬至はやぶさ2煎餅
冬服をびしつとあやしげな話


ふけとしこ
井戸水のほのと温しよ留守詣
覇者となる少年メリークリスマス
冬眠の蛇の鱗の擦れる音


冨岡和秀
地獄門アリの大群吸い込まれ
約束せよ死んではならぬ希死念慮
梵字書く美少女の美は透徹す
流刑地の透明びとよカフカ狂
愛のヒト無限を思う敬虔派


鷲津誠次
表札の剥がれし隣家村時雨
あつさりと婚期の過ぎて花八手
老詩人歩幅高らか落ち葉道
夕暮れの大根畑の白光り
トロッコの軋み緩やか年詰まる