2023年1月20日金曜日

令和四年 秋興帖 第三(仙田洋子・大井恒行・辻村麻乃)



仙田洋子
雨の日のまだいとけなき蕎麦の花
はたはたを追ひてはたはた飛びにけり
稲塚に当てし背中のあたたかく
ふるさとの上がり框の冷やかに
新豆腐ゆふべの空を雲流れ
十三夜遊郭跡の細き路
秋の川水泡の上へ水泡浮き


大井恒行
生き残る罪のようなる暮の秋
死に憑ける秋意とならん桂の樹
泉番水澄み空澄み山河澄み
秋天のそと胸に吸う青き風


辻村麻乃
鷹渡る古き商家の福瓦
翳りては紅葉且つ散る書院窓
一心に句帳を覗く秋日傘
多羅葉に刻まれてゐる秋日差
ボーイスカウトに囲まるる駅冬隣
沼底に銅眠るらし龍の玉
椋鳥のげえるげえると鳴き交はす

2023年1月8日日曜日

令和四年 秋興帖 第二(杉山久子・小野裕三・松下カロ)



杉山久子
ニュース速報二度目は無音草に露
感染の向かうに揺れて葛の花
コンビニに無いもの零余子・鞭・無償


小野裕三
校長と教頭の距離花梨の実
身に入むや影のひとつは毛むくじゃら
菊人形展の看板運びけり


松下カロ
つばめ帰るゆれる電線空へ置き
泣きながら国境をゆく鰯雲
コスモスの逆手を誘ふ少女たち