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2018年4月27日金曜日

平成三十年歳旦帖 補遺(ふけとしこ)/【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善 補遺(望月士郎)

平成三十年歳旦帖 補遺

ふけとしこ
手びねりの仏ちよこんと初明り
正月の大きな月を仰ぎけり
読み上げる歌留多に動く猫の耳




金子兜太氏追善 補遺

望月士郎
きょお!と幻聴夜汽車のような宿に眠る
「おおかみに」と刻む春昼の巨きな石
永き日の「遊牧集」で掻く背中

2018年4月6日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善・伍(山本敏倖・依光正樹・依光陽子・関悦史)



山本敏倖
「良く来た、良く来た」右手を挙げて春と逝く
慟哭のかたちに秩父音頭かな
青鮫から狼の背へ魂遊び
菜の花月夜へそ出しっ子の兜太いる
モノクロの借景と行く春の人
二月二十日は兜太の忌なりけり
人間を振りむかさせる兜太の忌


依光正樹
魚島や石の礫が届くだらうか


依光陽子
糞の中に黒き種あり兜太逝く
蝶よりもかろき人灰になつたといふか


関悦史
誤報後の春本当に兜太亡し



左様なら!
(「俳句四季」5月号の「俳壇観測」で、筑紫が「金子兜太逝く」を載せています)

2018年3月23日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善・肆(ふけとしこ)



ふけとしこ
兜太よりもらひし言葉草萌ゆる
戯れのはずのぶらんこ何処へ漕ぐ
  

2018年3月16日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善・参(長嶺千晶・大井恒行・堀本吟・小林かんな・渡邉美保)



長嶺千晶
造型壊すとき狼の山河
   

大井恒行
かの春に近代主義者だって?と詰め寄る兜太
     約束を果たせぬままに逝きたる兜太
大正八年以来の兜太雲に鳥


堀本吟
現代俳句協会入会当時二十余年前の思い出
まみえしに破顔一笑「暴れてください」
  人体冷えて東北白い花盛り 金子兜太『蜿蜿 』
「人体冷えて」と口ずさみつつ花を見る
戦後否戦前の春や否や兜太


小林かんな
旅立ちを知らず野の花摘んでいる
ひとびとに遺る大きな種袋
きよおと哭いて列車は春をどこまでも


渡邉美保
声に出す兜太の一句春の雲

2018年3月9日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善・弐(加藤知子・小沢麻結・竹岡一郎・小野裕三・早瀬恵子・杉山久子・神谷 波・真矢ひろみ・水岩瞳・渕上信子・池田澄子・中山奈々・木村オサム・浅沼 璞)



加藤知子
【訂正】
春落暉大先生の掌ありしが


小沢麻結
芽吹山秩父音頭の七七五
春疾風駄目出しの声なほ耳に
春の土なつかし荒凡夫とほし


竹岡一郎
智慧の夜や眉間は春の焚火照り
立春の巌が国家視てゐたり
大兵のぬくき手や飢ゑ刻まれし
初蝶を非業の島へ送り給ふ
狼に常世の萌のはてしなく


小野裕三
兜太なき春孤島も斜面も青くあり


早瀬恵子
梅咲いて骨太のひかり瞑するや
やあやあやあ梅の空には兜太あり


杉山久子
おおかみとともに行きたる野の青し


神谷 波
庭の雪解けしばかりに兜太逝く
獺祭に鮫ひきつれてゆく兜太


真矢ひろみ
20年ほど前に、或る会に遅参した兜太を某俳人が厳しく叱責した際、「やあ失敬、失敬 年のせいかトイレが近くなり・・」と全く意に介する素振りなく、その茶目っ気ぶりに唖然とする

「やあ失敬」とおぼろ月夜を後にせり
春泥や秩父の民の還りたる
青鮫がゐる白梅に明くる朝


水岩瞳
「戦争の影が・・」と兜太の年賀状
遥かなるこの春愁や兜太無し
大神になつて蛍をつけにけり


渕上信子
庭中の梅の盛りや兜太の訃
逝かれけり白い花みんな咲いてよ
春の夜の遠火事視るは老いひとり


池田澄子
秩父鉄道添いの去年の桜よあぁ
梅散りぬ秩父音頭をもう一度
    

中山奈々
兜太さんが亡くなったからといって、俳句人口の平均年齢が下がる訳じゃないのだけど、一気にみんな赤子のようになってしまった。

兜太忌は二月蜆の黒々と
蜆汁翁死すればみな赤子
献杯の酒安すぎてごめんなさい


木村オサム
おおかみが無骨な岩に立っていた
どの本能膨らまそうか枝垂梅
青き踏む九百二年後の兜太


浅沼 璞
火事一つ蛍一つをならべゆく


2018年3月2日金曜日

【歳旦帖特別版】金子兜太氏追善(辻村麻乃・曾根毅・月野ぽぽな・五島高資・北川美美・島田牙城・豊里友行・加藤知子・仲寒蟬・神山姫余・佐藤りえ・高山れおな・筑紫磐井)



辻村麻乃
 斑雪山
斑雪まだ聞き足らぬ秩父の子
困民党残せし痕や春社
狼の天を見つめる眼に涙
兜太いま春の武甲に木霊して
斑雪山あれは兜太だつたかもしれぬ


曾根毅
狼の冷たくなりし黒眼鏡
腹出して寝る人間【じんかん】の零余子飯


月野ぽぽな(海程)
天に星地に梅ともし兜太逝く


五島高資
片目にて笑む師のなみだ風光る
永日や手のひらに手のひらを置く
冴え返る利根の流れや巨星墜つ
利根川や冬三日月の残りたる
福島の残雪ゆがむ泪かな


北川美美
海程秩父道場にて兜太氏は旅館側で用意した二つに裁断されたバナナを片手摑みに登場。2015年の春だった。
マラソンや手渡すバナナ半裁に


島田牙城
金子兜太逝くや春星ふくらませ
なほ停まらざるや兜太の三輪車
星の中の星の地球ぞ兜太逝く
兜太の狼敏雄の狼を追へり
然らばとて然らばと言へり兜太逝く


豊里友行
海ほど脈打つ兜太のほうれん草
海ほどの金子兜太の夢野かな


加藤知子
春落暉大先生の掌ありしが
花盛りを待たず人体の別れかな
梅が香やへうと自在のかなたへと


仲寒蟬
どこまでも狼を追ひつづくべし
臍出して立小便を春空から


神山姫余
春一番兜太が鮫に乗ってゆく
天翔る陸の鯨や兜太逝く


佐藤りえ
草の舟乗らうかさうか手を貸さう


高山れおな
さほひめ と つれだつ まかみ ふりむかず


筑紫磐井
北天に架かるあれが
かくも静かに二月の記憶 兜太星



第83回海程秩父俳句道場(2015年4月5日(日)) 写真:北川美美
左より金子兜太・関悦史・筑紫磐井

左より、安西篤・筑紫磐井・金子兜太・関悦史
背後ホワイトボードの句(金子兜太:老人は青年の敵 強き敵 (筑紫磐井))