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2023年2月24日金曜日

令和四年 秋興帖 第七(みろく・竹岡一郎・渡邉美保・衛藤夏子)



みろく
木仏の召す木の衣天高し
長き夜やジョーカーの端のつまみ跡
猫が砂掻く掻く秋思あるらしく
秋の暮切り絵のごとくモンステラ
国境てふ仮想現実颱風来


竹岡一郎
天啓を印す早贄永い足搔き
茸いろいろ酒浸る身にひらき煙り
酩酊の長夜の嘘へ鏡向け
肉さまざま瞋恚の色と冷ゆるを嚙む
谺無く自潰の戦車雁の影
四散無残不遜に太り熟柿と墜ち
落人は睨(ね)む黒焦げの蝗串


渡邉美保
木犀の香を早退の理由にす
勾玉のかたちに齧り栗の虫
側溝を走るものあり赤のまま


衛藤夏子
映写機をまわす少年青蜜柑
朝顔の咲いて近道教えられ
バッタ飛ぶ宇宙ロケット発射の日

2017年1月6日金曜日

平成二十八年 冬興帖 第三 (杉山久子・曾根毅・衛藤夏子・前北かおる・山本敏倖・望月士郎)





杉山久子
話し出せばたちまち雪となる言葉
わらわらと視察団全員マスク
クリックの果ては地獄よ霜の花



曾根毅
冬に入る衝動買いのマングース
能舞台より現れし雪の果
目礼や霞む林檎を掌に受けて



衛藤夏子(船団の会)
魚可岸やゆらりゆらりと冬の月
綿虫と語りたい夜青い夜
サイフォンの朝の香や冬に入る




前北かおる(夏潮)
ストーブやドコモの電波入ります
ストーブや明日の富士に太鼓判
山小屋のストーブ燃ゆる寝静まる



山本敏倖 (山河代表・豈)  
紙飛行機の年末はうしろからピカソ
なまこなまこ法的処置を講じます
平熱の裸木折れる堕胎音
こんにゃく玉はとてもずるくて貴公子
白線の火事騒ぎから離陸する



望月士郎
どんよりと鮟鱇垂れて指さして
冬の葬うさぎのみみの血脈の
マスクから出ている目玉たちメトロ
モデルハウスに林檎の皮の垂れてゆく
風花の背中ななめに哀しんで



2015年10月30日金曜日

平成二十七年秋興帖 第七 (渡邉美保・ふけとしこ・佐藤りえ・望月士郎・衛藤夏子・小野裕三・堀本 吟・小林苑を・林雅樹)



渡邉美保
石に穴穿つ遊びをいわし雲
島暮れて酸橘百個の搾り汁
にれの木が森の入口色鳥来



ふけとしこ
子別れの鴉や窓に雨汚れ
走り根の抱へる水も澄みにけり
この駅へ通ひし日あり稲光



佐藤りえ
俯いて歩くよ秋の水を避け
武蔵野にむかし掘つ立て小屋の秋
回り道しない大人になつて秋
ガントリークレーンおとなしい宵寒
一団は踊りながらに過ぎて行く



望月士郎 (「海程」所属)
象に象重ねる銀漢までいくつ
めいめいの雨月の羊撫でて寝る
月の駅みんな待ってる紐電車
すすきはら母が背中に文字を書く
虫売りの妻です怖いとき笑う



衛藤夏子
露あれば星のしずくと思う朝
昼の月ふたりになって知るひとり
星月夜森に忘れたハイヒール



小野裕三(海程・豆の木)
秋郊のストロー一本惨劇のよう
雨音葉音槌音足音鉄道草
灯籠に集まりやすき唇あり



堀本 吟
擬態から真のいのちの火(ほ)が見える
音たてて銀河真中を流される
写生論どの満月もまんまるな
白かぼちゃただに置かれてある宇宙
電線の囲みに月という天体



小林苑を
天高し賑やかに行く春画展
椎の実を知らない子から貰ひけり
人類の絶へたるあとの欅の木




林雅樹(澤)
大学に芝刈る匂ひ鰯雲
虫の声高まる駅舎攻むるごと
デモに行く爺楽しさう銀杏踏み
秋出水デモ隊叫びつゝ流れ
川沿ひの小さな家や彼岸花