関悦史
群衆にパジャマの男大花火
大花火一千万円消えしといふ
揚花火宇宙の如く呆けて一人
七夕まつり軍用車両並べたる
胎蔵界なす書肆や幼き吾の秋
骰子の七の目吾を呑みて冷ゆ
竹岡一郎
じやがいもに躓いてゐる鄙の恋
アンデスの笛はじやがいも踊らしむ
じやがいもと蛸の格闘太古より
神饌の一つじやがいも布で磨き
鍛へ上げたる胸筋とじやがいもと
仲田陽子
親友のくれるものみな毒茸
温め酒フェリーのりばが見えており
写真立より月光のあふれけり
木の窪の声発しおり冬隣
仙田洋子
とほくまで車かがやく梅見月
梅林や地べたに坐ることのよき
鳥影の日ごとに増ゆる梅の花
夢の中まで白梅のびつしりと
白梅に抱かれつめたくなつてきし
ほんのりと酔ひ紅梅のつもりなる
母と子と坐る地べたや梅の花
仲田陽子
花辛夷薄目を開けて眠りたる
蜜を吸う鳥の瞼や梅三分
筆先は囀りを聞き分けている
メビウスの輪から出られずシクラメン
養花天枕の中は白き羽根
杉山久子
桜湯に透きてかさなる花のいろ
春の日に鸚鵡返しの人とゐる
足跡のとぎれしところ春の海
もてきまり
前の世の情事の余韻萩こぼれ
鬼なれば骨盤で漕ぐすすき原
逝くまでは次頁つづく野分かな
木村オサム(「玄鳥」)
目の前の烏瓜より説得す
飲み忘れた薬飛び出す鳳仙花
ニュートンの林檎売り物にはならず
聖骸布開いて芋の類出す
鼻孔より通じる永遠の芒原
仲田陽子
紙ヤスリかけても良夜凹凸す
小鳥来る致死の絵具を使いきり
鵙鳴くや足ばかり描くクロッキー
流星の捨てられている裏出口
ひと昔前を行くなり猫じゃらし
月野ぽぽな(「海程」)
水よりも水音澄みわたる夕べ
土にある戦の記憶曼珠沙華
うつしき引っ掻き傷よ流星は
関根誠子(寒雷・炎環・や・つうの会)
百日がもう了るのね百日紅
椿の実すこし歯を見せ行き違ふ
体内のしづかな秋を胃カメラは
ななかまど(( )俳句会)
満月を香ばしく焼く日曜日
武庫川に月見団子の降る心地
鉄棒をぐるりと回って星月夜
玻璃戸上り桔梗の花の開く音
栗飯の粒柔らかく片想い
平皿に檸檬潰れて死んでいる
真崎一恵 (( )俳句会)
秋風や底意地悪いクロワッサン
秋の川靴に魚の棲んでをり
左手に小説右手には秋気
蚯蚓鳴く後ろで叫ぶ洗濯機
いつだって梅酒ばかりね蚯蚓鳴く
名月や肌荒れ気味の顔周り
秋茄子の顔を思い出して電話
とこうわらび (( )俳句会)
送り火に送られゆくや夜の道
葡萄の実皮むくひまも待ちきれず
食卓に堂々と立つむかご飯
雨のたび一歩遠のく残暑かな
コスモスの波に揺れたるわが心
川嶋ぱんだ (( )俳句会、船団の会)
初紅葉椅子よりながい君の脚
手をつなぐときは静かな秋の夜
路地裏を通って帰る月見かな
言うことを聞けよ十六夜まで待てよ
紅葉且つ散ってあなたを抱きしめる
羽村 美和子 (「豈」「WA」「連衆」)
古代蓮十四五本は深眠り
化粧パックに隈取りの柄仏法僧
夕暮れの四隅あいまい青蜥蜴
関悦史
飛ぶカナブン追ひゆく食欲の雀
閉ぢられて超自我となる扇かな
イスカンダルの海を思へば涼しからん
瀬越悠矢
号令に級長の癖さるすべり
前衛に定めありなむ浮いてこい
夏旺んなり革命に詩のあれば
前北かおる(「夏潮」)
雲の影取り払はれて夏野かな
日おもてを歩む鴉や夏野原
火の粉振り撒きて子の泣く夏野かな
小沢麻結
栗の花散らばつてゐる夜明かな
夕立やざくざく駆くるスニーカー
はたた神甲斐の旅客を睥睨す
仲田陽子
ステンドグラス越しの福音蝉時雨
空蝉を集めるごとき安息日
涼しさや切り落とされしパンの耳
ピクルスの種を抜かれし穴に夏
百日紅眠りたりない日曜日
月野ぽぽな(「海程」同人)
炎天の重心ずれる旅鞄
近道は細道ゆうやけの匂い
ひとしずくまたひとしずく蛍の火
近恵(こんけい「炎環」「豆の木」)
何度でも手花火戦後民主主義
蝉の翅伸び夢見るという病
夕焼けの始まりは水の音して