北川美美鶯や昨日の庭に手を入れて
みつちりと十薬の庭文字うつり
老鶯や巨石並べて庭石屋
小林かんな黒南風や果実を龍と名づけたる
指笛は市場のおじい雲の峰
芭蕉畑より日焼けして子と大人
気圧910ヘクトパスカルソーダ水
海蛇を燻して吊るす朱の瓦
椿屋実梛令和二年春がなかつた気がしてる
闇市のごとくマスク売らるる商店街
ひとりしづか巣籠り生活慣れてきて
自粛といふ言葉に慣れて豆ごはん
下坂速穂真夜中の雨明け方の燕
行かぬ方の道うつくしく麦の秋
麦秋を見つめてしづかなる二人
北川美美鶯や昨日の庭に手を入れて
小林かんな黒南風や果実を龍と名づけたる
椿屋実梛令和二年春がなかつた気がしてる
下坂速穂真夜中の雨明け方の燕
花尻万博蜷の道昼長々とありにけり
竹岡一郎疫の春腹話術師の舌の赤
中山奈々蜥蜴が出てきた世界そのものがバベルの塔だつた
北川美美永き日の窓側に置く電波時計
大関博美LEDランプにレタス盛りなり
小野裕三(海原・豆の木)亀あれば鼓膜の奥で鳴きにけり
ふけとしこ先勝の朝や燕の来ることも
渡邉美保さへづりの樹下接点のなき二人
下坂速穂誕生日までの一ト月青き踏む
岬光世早春の男同士の動物園
依光正樹一園をうち鎮めたる梅花かな
依光陽子嫩草や秋は芒が丈隠し
北川美美暖房の人感スイッチにて稼働
北川美美死ねば居ず地水火風か四方の春
浅沼 璞ねむたげなまなこ降りくる花あふち
林雅樹(澤)池に浮く子供の靴や蝉しぐれ
北川美美喧嘩するためのトマトを山積みに
青木百舌鳥(夏潮)きらきらと化繊の綾や明易き
岸本尚毅笑ひをる顔の若あゆ新茶汲む
田中葉月美しき雨つれて来よ道をしへ
堀本 吟季のみだれ
花尻万博問い掛けの途中昼寝始まり
井口時男沢水ひかりころがる百の青胡桃
渡邉美保水音に誘われて入る木下闇
山本敏倖草木染め夏の銀河で濯ぎおり
神谷 波蝉の殻あつめて忘れ脱ぎ散らかし
木村オサム真夜も目を開ける令和の羽抜鶏
坂間恒子炎天へ自己確認の手形押す
浅沼 璞ネクタイをゆるめる首の夜長かな
林雅樹(澤)秋晴や尿もて崩す砂の城
北川美美山に霧ワインセラーに石の門
ふけとしこ秋天や鳶が掴みそこねし杭
北川美美うぐいすをさかしまにきくあさねかな
椿屋実梛夏立つや異国の青き水の瓶
曾根 毅眦を研ぎ澄ましたりくちなわよ
辻村麻乃あめんぼの動けば光動きたる
小野裕三枝豆を悲劇のように盛りにけり
仲寒蟬ひぐらしの周り時間の濃くうすく
山本敏倖おるがんの五臓六腑が見える秋
内村恭子鳥のごと石油掘削機の春愁
林雅樹(澤)恋猫や煌々として花やしき
神谷 波たんぽぽの絮吹きをはり走り出す
北川美美春陰の臨月となる妃かな
中村猛虎意地悪なこの意地悪なチューリップ
近江文代喪の家に色増えてゆく去年今年
網野月を今年から去年へ戻る羽田発
北川美美歌骨牌畳の縁に立つ亡霊
小野裕三元朝の尻尾の殖えていたりけり
加藤知子小春日の鳥語おおきく旋回し
林雅樹溶接の火花や雪の降り始む
北川美美地図になき城跡をゆく十二月
杉山久子十二月八日盥の底に傷
夏木久オーロラをと笑みを零す冬菫
北川美美地球儀を回す占い天の川
花尻万博猟犬を煙に包む拍子かな
神谷 波蛇のしばし息んでゐる花野
家登みろくコスモスやてんでに揺れて総揺れに
青木百舌鳥(夏潮)夏木立右へ左へフリスビー
早瀬恵子体内の水の八月痺れおり
坂間恒子産廃の天辺で啼く夏の雉子
近江文代ママ歌いたいのソーダ水くるくる
北川美美野口五郎岳隠してゐたる雲の峰
大井恒行掘り進む夏 地球のみやこ出で来たり
曾根 毅空蟬や音を立てずに崩れ去り
網野月を持ち運ぶ略礼服や日の盛
早瀬恵子春ゆけり万葉カクテルのパレット
浅沼 璞くわふんくわふん春風亭のやうな顔
北川美美引き寄せて桜の実なり潰し嗅ぐ
北川美美春岬バナナワニ園上から見
小野裕三(海程・豆の木)万巻の背表紙に向け北窓開く
仙田洋子はるばると来し江南の桜かな
杉山久子スカートの楕円にまはる鳥の恋
真矢ひろみ父と子とコンビニ弁当初茜
北川美美嫁が君一秒で着く隣かな
西村麒麟平面の広がつてゐる初景色
曾根毅傍らに二人を育て薺粥
青木百舌鳥(夏潮)初旦真魚箸の盛る貝の音
小沢麻結初夢は忘れ悲しみ残りをり
前北かおる(夏潮)ふつくらと御殿の御屋根松の内
辻村麻乃斑雪山
曾根毅狼の冷たくなりし黒眼鏡
月野ぽぽな(海程)天に星地に梅ともし兜太逝く
五島高資片目にて笑む師のなみだ風光る
北川美美
海程秩父道場にて兜太氏は旅館側で用意した二つに裁断されたバナナを片手摑みに登場。2015年の春だった。
島田牙城金子兜太逝くや春星ふくらませ
豊里友行海ほど脈打つ兜太のほうれん草
加藤知子春落暉大先生の掌ありしが
仲寒蟬どこまでも狼を追ひつづくべし
神山姫余春一番兜太が鮫に乗ってゆく
佐藤りえ草の舟乗らうかさうか手を貸さう
高山れおなさほひめ と つれだつ まかみ ふりむかず
筑紫磐井
北天に架かるあれがかくも静かに二月の記憶 兜太星
第83回海程秩父俳句道場(2015年4月5日(日)) 写真:北川美美
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| 左より金子兜太・関悦史・筑紫磐井 |
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| 左より、安西篤・筑紫磐井・金子兜太・関悦史 背後ホワイトボードの句(金子兜太:老人は青年の敵 強き敵 (筑紫磐井)) |
中西夕紀細き糸曳きて鷺飛ぶ冬の朝
北川美美柴犬が戻つて来たり枯野より
西村麒麟鯛焼や遊びをせんとたまに思ふ
佐藤りえ釣り人はダム湖の冬日見て帰る
筑紫磐井君の心は小春のやうに虚子の穴
羽村美和子品格に一番遠く海鼠ずき
浅沼 璞小春まだ元気かと腕にとまるよ
五島高資鉄パイプ落ちて響ける枯野かな
高山れおな自平成二十五癸巳至平成三十戊戌歳旦
北川美美エスカルゴ山盛りにして銀の皿
北川美美公園のベンチ置き去り秋の夕
仙田洋子簡単な音が好きなり鉦叩
曾根毅隠沼や落葉まみれという愛も
北川美美透きとほる氷やはらか緑の夜
山本敏倖ポンチ絵
佐藤りえミルクティーミルクプリンに混ぜて夏
筑紫磐井圏外に妻の秘中の秘の避暑行
網野月を免許証に別人の顔道おしえ
池田澄子藻の花や愛は水溶性ならん
仙田洋子みどりごにさくらさくらとささやきぬ
大井恒行鳥を生みし空の蒼さや花空木
北川美美菜の花と一緒に茹でるスパゲッティ
早瀬恵子(同人誌「豈」)アイリスの髪ゆたかなるミュシャ・カフェ
杉山久子花の闇猫のからだとまじり合ふ
曾根 毅眠そうな蜆の影を見ておりぬ
坂間恒子花種を蒔く手をあげる影法師