2015年2月28日土曜日

平成二十七年歳旦帖、第八 (下坂速穂・岬光世・依光正樹 ・依光陽子)



下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
初髪のひかりのごとく小路かな
一歯欠けたる七歳の御慶かな
初声やほのかに明きところより



岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
売初や粗品を富士のやうに盛り
悠悠と筆の機嫌も吉書かな
任されて鐘を撞くなり松納



依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
みつまたのつぼみと冬の空気かな
本堂のまつ暗にして耳袋
鐘が鳴る方へ歩きぬ初詣



依光陽子 (「クンツァイト」「屋根」「ku+」)
陳ね蔓の捻ねて数寄なりお元日
物と物触れ合はずある淑気かな
松明や真中に一羽立たしめて



2015年2月20日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第七 (中西夕紀・福永法弘)



中西夕紀
放鷹の空真青なる三日かな
日中を山影の家初鼓
初乗のやはり眠つてしまひけり



福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
船名を代々に引き継ぎ漁始
むかしは海見えし石段福詣
正月テレビ阿Q笑ひをひきつらせ

2015年2月13日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第六 (水岩 瞳・羽村 美和子・飯田冬眞・筑紫磐井)



水岩 瞳
いつの世もお金大切のこり福
大仏の背の青空の淑気かな
遠き日の獅子舞どこへいつたやら


羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人)
しらじらとすずなすずしろ原子炉
葉ぼたんの耳鳴り皇帝円舞曲
歳旦の過去ばかり見える遠眼鏡



飯田冬眞(「豈」「未来図」)
初筑波風の柱をかいくぐる
頭を下げて男根捧ぐ初神楽
初夢の羊は銃を抱へ跳ぶ


筑紫磐井
構想力がすべてはじまり初鴉
歳末が歳旦となる一昼夜
破礼てゐて春の下の句めでたけれ




2015年2月6日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第五 (西村麒麟・小野裕三・岡村知昭・澤田和弥・早瀬恵子・浅沼 璞・望月士郎・近恵)




西村麒麟
一月の一日はよき誕生日
掃初の後やそれぞれ読書して
通勤が始まつてゐる五日かな
弓初の弓がぞろぞろ帰るなり
初大師とんとこ飴が好きで買ふ




小野裕三(「海程」「豆の木」)
極月の眼科まっしぐらに光る
半島をねじまくように進む二日
誠実なジョン葱を包んで帰る



岡村知昭
下級生泣く雪達磨食べられず
小豆粥掬う仲直りはせずに
雪晴のことばまみれの鳩は雄



澤田和弥
ままなるはなんとうつくし初東雲 



早瀬恵子(「豈」同人 )
番いたるこの国に生れ睦び月
食積みのお取り箸よりお家柄
姉さまや一上一下の嫁が君



浅沼 璞
細胞もすつ飛ぶ羽子の突かれやう
愛しけやし雑煮の餅の焦げ加減
マネキンが雑煮の模型喰ふところ
パックして餅もあらはな鏡肌
粥ばしら飛行機雲の成れの果


                                  
望月士郎 (「海程」所属)
キュビスムの顔してをりぬ去年今年
柏手の外側みんな松の内
歌留多取り「るふによみがわ」眺めせし間に



近恵(「炎環」同人、「豆の木」)
片方の鼻が詰まって去年今年
初御空家族の形をして歩く
読初のすぐにしびれる両の足
独楽並ぶどれも南に倒されて      
なまはげの正しい話し方を習う