西村麒麟一月の一日はよき誕生日
掃初の後やそれぞれ読書して
通勤が始まつてゐる五日かな
弓初の弓がぞろぞろ帰るなり
初大師とんとこ飴が好きで買ふ
小野裕三(「海程」「豆の木」)極月の眼科まっしぐらに光る
半島をねじまくように進む二日
誠実なジョン葱を包んで帰る
岡村知昭下級生泣く雪達磨食べられず
小豆粥掬う仲直りはせずに
雪晴のことばまみれの鳩は雄
澤田和弥ままなるはなんとうつくし初東雲
早瀬恵子(「豈」同人 )番いたるこの国に生れ睦び月
食積みのお取り箸よりお家柄
姉さまや一上一下の嫁が君
浅沼 璞細胞もすつ飛ぶ羽子の突かれやう
愛しけやし雑煮の餅の焦げ加減
マネキンが雑煮の模型喰ふところ
パックして餅もあらはな鏡肌
粥ばしら飛行機雲の成れの果
望月士郎 (「海程」所属)キュビスムの顔してをりぬ去年今年
柏手の外側みんな松の内
歌留多取り「るふによみがわ」眺めせし間に
近恵(「炎環」同人、「豆の木」)片方の鼻が詰まって去年今年
初御空家族の形をして歩く
読初のすぐにしびれる両の足
独楽並ぶどれも南に倒されて
なまはげの正しい話し方を習う