2015年2月6日金曜日

平成二十七年歳旦帖、第五 (西村麒麟・小野裕三・岡村知昭・澤田和弥・早瀬恵子・浅沼 璞・望月士郎・近恵)




西村麒麟
一月の一日はよき誕生日
掃初の後やそれぞれ読書して
通勤が始まつてゐる五日かな
弓初の弓がぞろぞろ帰るなり
初大師とんとこ飴が好きで買ふ




小野裕三(「海程」「豆の木」)
極月の眼科まっしぐらに光る
半島をねじまくように進む二日
誠実なジョン葱を包んで帰る



岡村知昭
下級生泣く雪達磨食べられず
小豆粥掬う仲直りはせずに
雪晴のことばまみれの鳩は雄



澤田和弥
ままなるはなんとうつくし初東雲 



早瀬恵子(「豈」同人 )
番いたるこの国に生れ睦び月
食積みのお取り箸よりお家柄
姉さまや一上一下の嫁が君



浅沼 璞
細胞もすつ飛ぶ羽子の突かれやう
愛しけやし雑煮の餅の焦げ加減
マネキンが雑煮の模型喰ふところ
パックして餅もあらはな鏡肌
粥ばしら飛行機雲の成れの果


                                  
望月士郎 (「海程」所属)
キュビスムの顔してをりぬ去年今年
柏手の外側みんな松の内
歌留多取り「るふによみがわ」眺めせし間に



近恵(「炎環」同人、「豆の木」)
片方の鼻が詰まって去年今年
初御空家族の形をして歩く
読初のすぐにしびれる両の足
独楽並ぶどれも南に倒されて      
なまはげの正しい話し方を習う