仲寒蟬殷周の前に夏のあり梅雨鯰
すれ違ふ巨船と巨船かき氷
海峡の向かうも日本花うつぎ
遊船の後ろ軍艦停泊中
最新鋭戦闘機へと草矢撃つ
雷とおなじ高さの階にをり
邪馬台国まで百余里をみなみ風
花尻万博時化の日の朝日に透けて巣立ちけり
青梅に午前の似合ふ涼しさよ
浄土に鬼 鬱金(うこん)色に花蜜柑
蠛蠓の眠り浮かべば光らざる
水槽を抜けて灯点る単帯
麦の穂と南紀の畳乾くなり
木村オサム(「玄鳥」)冷蔵庫からよく冷えた十二使徒
裸なのにてらてら機械めいた奴
峰雲へ志望動機を叫びをり
永遠に留守のままなる濃あぢさゐ
持ち歩く骨エルサレムまで西日
望月士郎 (「海程」所属)蛇の真ん中あたりにある正午
金魚掬いみんな外科医の貌をして
髪洗う闇に潜水艦浮上
佐藤りえ休日はウツボカズラを擬態する
みちのくの鹿の子はよい子舌を出す
液体になるまで堪え蛞蝓
夏めくや一般的な叫び方
くちなはの真青の方について行く