2015年7月17日金曜日

平成二十七年夏興帖 第二 (仲寒蟬・花尻万博・木村オサム・望月士郎・佐藤りえ)



仲寒蟬
殷周の前に夏のあり梅雨鯰
すれ違ふ巨船と巨船かき氷
海峡の向かうも日本花うつぎ
遊船の後ろ軍艦停泊中
最新鋭戦闘機へと草矢撃つ
雷とおなじ高さの階にをり
邪馬台国まで百余里をみなみ風



花尻万博
時化の日の朝日に透けて巣立ちけり
青梅に午前の似合ふ涼しさよ
浄土に鬼 鬱金(うこん)色に花蜜柑
蠛蠓の眠り浮かべば光らざる
水槽を抜けて灯点る単帯
麦の穂と南紀の畳乾くなり



木村オサム(「玄鳥」)
冷蔵庫からよく冷えた十二使徒
裸なのにてらてら機械めいた奴
峰雲へ志望動機を叫びをり
永遠に留守のままなる濃あぢさゐ
持ち歩く骨エルサレムまで西日




望月士郎 (「海程」所属)
蛇の真ん中あたりにある正午
金魚掬いみんな外科医の貌をして
髪洗う闇に潜水艦浮上




佐藤りえ
休日はウツボカズラを擬態する
みちのくの鹿の子はよい子舌を出す
液体になるまで堪え蛞蝓
夏めくや一般的な叫び方
くちなはの真青の方について行く