2015年12月11日金曜日

平成二十七年冬興帖 第三 (前北かおる・ふけとしこ・川嶋ぱんだ・とこうわらび・林雅樹・早瀬恵子)



前北かおる(夏潮)
仮り初めの勤めに馴染み小六月
時なしの蚊にたかられて枇杷の花
色付きてなほ稚く実千両


ふけとしこ
滝壺を覗き込むとき背に冬日
冬紅葉キャラメルシュガー壺に満ち
時雨忌の湖や鳶を見失ふ


川嶋ぱんだ((    )俳句会代表、船団の会)
父ちゃんが炬燵と言わんばかりかな
ストーブの名前にポチとつけてみる
布団から顔出せば国境あたりかな
空き缶を積んで冬日の主夫を抱く
風花が散るまで君を待っている
風花が散るまで黄身のぷるぷるす
風花が散る散る海が満ちていく


とこうわらび((    )俳句会)
氷雨降る肩に不安の刺さる音
クリスマス子供をやめた証の日
枯れ葉落つまたも懲りずに酔っ払い
マフラーに久しぶりねとご挨拶
ストーブやごくりと灯油のまれゆく
朝焼けを背負って行くや寒の入


林雅樹 (澤)
枯野より父帰らずよ次は息子か
枯野に駆け込むMajiで尿洩る五秒前
銀杏散る痴漢注意の看板に


早瀬恵子
冬銀河メトロノームの甘き死よ
妖怪の国籍いずこ冬の園
霜月のボジョレ・ヌーボー君が好き