内村恭子 (「天為」同人)稜線の遠く鋭くなりて冬
木枯しや四人揃へば雀荘へ
六地蔵頭巾を深々と時雨
信楽焼に水を吸はせて山の冷え
鳴き真似の枯野に響く九官鳥
渡邉美保立冬や砥石平らに均さねば
砂浜の砂やはらかく冬に入る
冬空へゴム鉄砲を撃ちにけり
小野裕三 (海程・豆の木)小雪の大声で呼ぶ隠れんぼ
ふしぎな仲間曇天の冬の一日
十二月の雨を結んでさようなら
佐藤りえ枯野道ころびすばやく起き上がる
しはぶいてあたまの穴のひろがりぬ
狐火を焚いて迎へてくれさうな
寒林にATMでも作らうか
方形の麺麭積まれゐる十二月
木村オサム(「玄鳥」)焚火して戦に敗けた顔となる
生き残りほわんと座る散紅葉
形だけのお辞儀で済ませ山眠る
包帯を巻いた海鼠の集う庭
週刊誌丸めて叩く狸かな
栗山心(「都市」同人)二の酉やヒモの極意を盗み聴く
ニの酉の河童娘の秋波かな
ピンヒールブーツサンダル酉の市