2015年12月4日金曜日

平成二十七年冬興帖 第二 (内村恭子・渡邉美保・小野裕三・佐藤りえ・木村オサム・栗山心)



内村恭子 (「天為」同人)
稜線の遠く鋭くなりて冬
木枯しや四人揃へば雀荘へ
六地蔵頭巾を深々と時雨
信楽焼に水を吸はせて山の冷え
鳴き真似の枯野に響く九官鳥



渡邉美保
立冬や砥石平らに均さねば
砂浜の砂やはらかく冬に入る
冬空へゴム鉄砲を撃ちにけり



小野裕三 (海程・豆の木)
小雪の大声で呼ぶ隠れんぼ
ふしぎな仲間曇天の冬の一日
十二月の雨を結んでさようなら



佐藤りえ
枯野道ころびすばやく起き上がる
しはぶいてあたまの穴のひろがりぬ
狐火を焚いて迎へてくれさうな
寒林にATMでも作らうか
方形の麺麭積まれゐる十二月



木村オサム(「玄鳥」)
焚火して戦に敗けた顔となる
生き残りほわんと座る散紅葉
形だけのお辞儀で済ませ山眠る
包帯を巻いた海鼠の集う庭
週刊誌丸めて叩く狸かな



栗山心(「都市」同人)
二の酉やヒモの極意を盗み聴く
ニの酉の河童娘の秋波かな
ピンヒールブーツサンダル酉の市