2016年3月25日金曜日

平成二十八年春興帖 第二( 曾根 毅・木村オサム・渡邉美保)



曾根 毅(「LOTUS」同人)
澄みきっている春水の傷口めく
竹林を来て春昼となっており
いのちまだ生臭くありつばくらめ




木村オサム(「玄鳥」)
曼荼羅の押し寄せてくる雪解川
啓蟄や黙って頬を差し出しぬ
透明な蝶の飛び交う試着室
春雷や向う三軒印度人
泳げないのに朧夜に駆り出さる



渡邉美保
春一番きのふのままに木のベンチ
ドーナツのやうな木の瘤風光る
満天星の芽だちに触るる手の冷た
雉鳩の羽根片びらき雛荒し
笑ふやうな鳥の鳴き声抱卵期