2016年3月18日金曜日

平成二十八年春興帖 第一 (仙田洋子・仲田陽子・杉山久子)




仙田洋子
とほくまで車かがやく梅見月
梅林や地べたに坐ることのよき
鳥影の日ごとに増ゆる梅の花
夢の中まで白梅のびつしりと
白梅に抱かれつめたくなつてきし
ほんのりと酔ひ紅梅のつもりなる
母と子と坐る地べたや梅の花



仲田陽子
花辛夷薄目を開けて眠りたる
蜜を吸う鳥の瞼や梅三分
筆先は囀りを聞き分けている
メビウスの輪から出られずシクラメン
養花天枕の中は白き羽根




杉山久子 
桜湯に透きてかさなる花のいろ
春の日に鸚鵡返しの人とゐる
足跡のとぎれしところ春の海