2016年7月22日金曜日

平成二十八年花鳥篇 第七 (堺谷真人・中西夕紀・仙田洋子・五島高資・渡邉美保)



堺谷真人
開きゝる仁王の指や初燕
七色に爪を塗り分け養花天
風光る少年院の出口かな
卯の花腐し銅の喉ごぼと鳴り
ゆれやまぬ国に生まれて顔佳鳥
黒揚羽風に起伏のあるごとし
釈迦牟尼の肩の厚さよ更衣



中西夕紀
板を摩る涼しき音に美僧来る
裸子の遠見なれども女の子
花椎に夜の電車の波打てり
不死男忌の隅から埋まるカウンター



仙田洋子
緑蔭にそろそろ友の来る頃か
日傘さすスーラのひとと連れ立ちぬ
白南風や部室の窓を開け放ち
ロブ高く上がり青水無月の空
若きらの太鼓ひびけり青葉山
キャンパスの隣に墓地や油照
金環蝕蝮隠れてゐたる谷



五島高資
手の甲に掌を置く朧かな
み空よりしだれ桜のさくなだり
藤垂れて粒立つ海の底ひかな
うつせみへ通ふ風あり薪能
石南花の咲く紫の雲路かな



渡邉美保
潮風を受け夕日受け椿山
鳥のこゑ聞き分けてゐるよなぐもり
野遊びの袋に鍵を探りおり