堺谷真人開きゝる仁王の指や初燕
七色に爪を塗り分け養花天
風光る少年院の出口かな
卯の花腐し銅の喉ごぼと鳴り
ゆれやまぬ国に生まれて顔佳鳥
黒揚羽風に起伏のあるごとし
釈迦牟尼の肩の厚さよ更衣
中西夕紀板を摩る涼しき音に美僧来る
裸子の遠見なれども女の子
花椎に夜の電車の波打てり
不死男忌の隅から埋まるカウンター
仙田洋子緑蔭にそろそろ友の来る頃か
日傘さすスーラのひとと連れ立ちぬ
白南風や部室の窓を開け放ち
ロブ高く上がり青水無月の空
若きらの太鼓ひびけり青葉山
キャンパスの隣に墓地や油照
金環蝕蝮隠れてゐたる谷
五島高資手の甲に掌を置く朧かな
み空よりしだれ桜のさくなだり
藤垂れて粒立つ海の底ひかな
うつせみへ通ふ風あり薪能
石南花の咲く紫の雲路かな
渡邉美保潮風を受け夕日受け椿山
鳥のこゑ聞き分けてゐるよなぐもり
野遊びの袋に鍵を探りおり