2016年7月8日金曜日

平成二十八年花鳥篇 第五 (小野裕三・小沢麻結・網野月を・青木百舌鳥・山本敏倖)



小野裕三 (海程・豆の木)
勇気その他ぜんぶ並べて山滴る
赦されるように芒種の瞳集う
風の身体持ち試着室を覗く夏



小沢麻結
言ひさして唇思案チューリップ
紫陽花は水色恋は修羅場色
美央柳蘂の深きに蟻捕へ



網野月を
ウルトラマン好きの私は梅雨生れ
梅雨生れテレビは夢の箱だった
自転車に乗れたあの日の梅雨生れ
背番号28なり梅雨生れ
梅雨生れ安い方から二番目を
恋人よ梅雨に晴れ間の日曜日
やこまんの輸血を繰りて梅雨の冷え



青木百舌鳥
暗闇の水面にとまる落花かな
やがて目を逸らしうららか我と鹿
双眼鏡霾る町の何処か見え
一鉢に満ちしレタスを搔き初むる
水路とはなれど清水の拍子かな




山本敏倖 (豈・山河)
大根の花より貰うシノプシス
輪郭は菜の花月夜あるでんて
半ドアの螢補聴器濡れている
紫陽花や横笛の音の首実検
水中花事実の本籍見ています