小野裕三 (海程・豆の木)勇気その他ぜんぶ並べて山滴る
赦されるように芒種の瞳集う
風の身体持ち試着室を覗く夏
小沢麻結言ひさして唇思案チューリップ
紫陽花は水色恋は修羅場色
美央柳蘂の深きに蟻捕へ
網野月をウルトラマン好きの私は梅雨生れ
梅雨生れテレビは夢の箱だった
自転車に乗れたあの日の梅雨生れ
背番号28なり梅雨生れ
梅雨生れ安い方から二番目を
恋人よ梅雨に晴れ間の日曜日
やこまんの輸血を繰りて梅雨の冷え
青木百舌鳥暗闇の水面にとまる落花かな
やがて目を逸らしうららか我と鹿
双眼鏡霾る町の何処か見え
一鉢に満ちしレタスを搔き初むる
水路とはなれど清水の拍子かな
山本敏倖 (豈・山河)大根の花より貰うシノプシス
輪郭は菜の花月夜あるでんて
半ドアの螢補聴器濡れている
紫陽花や横笛の音の首実検
水中花事実の本籍見ています