2017年7月21日金曜日

平成二十九年 花鳥篇 第四(林雅樹・内村恭子・ふけとしこ・小野裕三・木村オサム・前北かおる・加藤知子)



林雅樹
満を持し放つおならや松の花
二の腕にまゆみ命や桜鯛
ネル着たる長濱ねると握手せむ
銅像を染める雨粒楠若葉
仏語授業さぼりし葵祭かな

【紹介文・近況】
一九六〇年生。一九九四年から小澤實に師事。二〇〇〇年澤入会。二〇〇二年 澤新人賞、二〇〇三年第二回澤特別作品賞受賞。現在澤同人。著書:『喨喨集: 鷹新人スクール句集』(一九九五年)『俳コレ』(二〇一一年)(いずれも共著)最近は句会も吟行も縁遠くなって、結社誌以外では、このなんとか帖がほぼ唯一の作品発表の場である。


内村恭子
旅楽し大樹の陰に瓜を食む
灼くる地の国境点線にて真直ぐ
大いなる作り滝ありけふの宿
楽園にバビロン思ふ茂りかな
オアシスの井戸を照らせる夏の月
噴水に夜はライオンの来てゐたり


ふけとしこ
木漏れ日揺るる梅花藻の白揺るる
葭切に舟板塀にミサイルに
鮮血は椋鳥のもの姫女苑
ひよこ豆ひとつ含めば百合ひらく


小野裕三(海程・豆の木)
空梅雨の素足の部屋のトムとジェリー
不屈と言うは容易き言葉月涼し
階段がよく広がって満天の夏
夏の露弁天島を研ぎ澄まし
壁に大穴塞ぐでもなく梅雨長し


木村オサム(「玄鳥」)
囀やローマ帝国衰亡史
暮の春音叉かざして気球待つ
モノクロの記憶の底のチューリップ
梅雨深し自画像がみな河馬に似る
突然の泉に出会ふまで歩く


前北かおる(夏潮)
椋鳥の群枇杷次々に撃墜し
放課後の枇杷の梢に金髪君
日と陰と接するところ夏の蝶

【紹介文・近況】
1978年4月28日生まれ。高校時代、本井英先生に作句の手ほどきを受ける。慶大俳句、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加。長男藤次郎の誕生を記念して、句集『ラフマニノフ』(2011年、ふらんす堂)を上梓。長女翠の誕生を記念して、句集『虹の島』(2015年、ふらんす堂)を上梓。2016年は年間150回出席を目指して句会に励み、これを達成。2017年は年間200回出席を目指すも既に黄信号。俳人協会幹事。日本伝統俳句協会千葉部会副部会長。千葉県俳句作家協会理事。ブログ「俳諧師 前北かおる」http://maekitakaoru.blog100.fc2.com/


加藤知子(「We」「連衆」「豈」)
少し湿る花びらほどの霊安室
夏カーテン開けて筋肉ケンタッキー
靴脱いで謀議しただけアマリリス
水張田を横切る風の無言なり
茅の輪くぐり無限大という宿題