2017年7月7日金曜日

平成二十九年 花鳥篇 第二(辻村麻乃・小沢麻結・渡邉美保・神谷波・椿屋実梛・松下カロ・仲寒蟬)



辻村 麻乃
走り梅雨何処かで妖狐に呼ばれたる
麗春花毛深き蕾の朱き舌
麦秋や撓ふ側から煌めけり

【紹介文・近況】
1964年東京都生まれ。1994年「篠」入会。2006年『プールの底』(角川書店)。俳人協会埼玉県支部事務局、世話人。ににん創刊同人。篠、編集長、副主宰。
     *    *
詩人の父、岡田隆彦の影響で幼い頃から詩作を始めるが、祖母、母が俳人であったため同時に句の手解きを受ける。青年時代はロックバンド活動(現在も)に傾倒し一旦文学から離れるも長女を身籠った30歳から篠に入会して本格的に俳句を始める。ここ数年は母、岡田史乃の代行で篠を編集発行している。
秩父の魅力に取り憑かれ目下毎月数回吟行に訪れている。妖怪も好きで、きつね句会を2016年末に行った。切れのある句作りを目指す。


小沢麻結
さりさりと包丁砥ぎぬ青楓
クレーンはビルを積み上げ祭町
ラジオ体操夏雲へ胸反らし


渡邉美保
馬術部に新入りの馬桜咲く
最上階にもらはれてゆく君子蘭
青桐のいよいよ青し水ようかん


神谷 波
そはそはと枝見繕ふ鴉二羽
花びらのよよと崩れて牡丹かな
濡れることできず店頭のあぢさゐ
それぞれのうしろ姿や燕子花
この村の一員として夏鶯

【紹介文・近況】
誰に誘われたでもなく、ある日突然俳句をやろうと思い立ち作句をはじめて40年になりました。乳幼児を抱えておりましたので句会にでることなどはとてもできませんし、どこでどのような句会が開かれているのかもわからないような状態でした。新聞の地方欄に投句をしたりしておりましたが、「狩」の創刊を知り入会、10年後に退会し「貂」に入会、代表の川崎展宏の逝去により「貂」を退会し「豈」に入れていただきました。
現在暮らしております婚家は三重県の最北部のいなべ市で、裏の峠を越えますと滋賀県です。冬にはほどほどの距離に白銀の伊吹山を眺めることができます。月の伊吹山は絶景です。そして猿や鹿の獣害に日々悩まされております。このような豊かすぎる自然と格闘しながら作句しております。


椿屋実梛
草間彌生展
水玉の斑がとめどなき夏放つ
ゆらゆらと蛍観にいくバスに乗る
夏休み夢見るために眠りけり
練習のシュートが決まり緑の夜
夜釣りして心遠くに置くばかり


松下カロ
あぢさゐのあぢさへ苦き帰郷かな
箱庭の道を帰つて来る男
あぢさゐに隠れて見えぬ帰り道


仲寒蟬
落花校門をんな校長仁王立ち
蝌蚪の紐超大陸のありし頃
連翹を抜け来る風のありやなし
葬儀屋の軒にぎやかに夏つばめ
二の腕のまぶしきに蠅とまりをり
かきつばた流るともなく水流れ
百合香る遺影のあまり幼きに