2017年7月28日金曜日

平成二十九年 花鳥篇 第五(田中葉月・花尻万博・羽村美和子・浅沼璞)



田中葉月
さくらんぼ涙の止まるクスリです
かくれんぼ見つけてほしい蛇苺
深山の独り芝居をホトトギス
ぼうたんの花片の中へ身投げする
初夏の小さな銀貨のものがたり
奔放な果実の匂ひ夕立あと


花尻万博
美しき物の例へを蛇苺
筍に気を許しても訛りけり
水は水引き寄せ下る夏蜜柑
舟焼きて蕗の雨へと戻り来し


羽村美和子(「豈」「WA」「連衆」)
庭先に孔雀来ている青葉風
ほととぎす数式の途中透けてくる
薔薇園の風にはらりと怪文書
葉桜に引っ掛かってる変声期
古代蓮ハイブリッドの世に生まれ


浅沼 璞
俺は津までお前も津まで花筏
髪すこし短くあやめやや硬く
とぎれなく翼ある声木下闇